11章 ピアノの選び方について

今の時代は、インターネットで簡単にいろんな情報が得られる時代です。

ピアノの選び方等もネットから情報が得られますので、今更私があえてお伝えすることもないのですが、生徒さんたちから楽器の購入について話を聞くと、やっぱり物事には本音と建て前があるなと思います。

楽器店で話しをする営業マンの方々は、当然ピアノを売るのが仕事ですからあまりマイナスになることや本音はでてきません。

今回は個人的見解と思って参考にしてもらえればいいので、少し私の考えをお話ししていきます。

1.ピアノは「外」ではなく「中」を見せてもらう

まず、オークションやメルカリ等で購入、知らない方からの直買は避けてください。知り合いであったり実家に眠っているものだったりを譲り受けて再利用するのはOKですが、メンテナンスは必要です。

お子さんが上達してきたり、電子ピアノで練習してきた大人の生徒さんが、将来アコースティツクピアノが欲しくなり買い替えや購入するときには、必ず楽器店に足を運んでください。

そして楽器店に見に行ってするべきことは、「見てもわからなくてもピアノの中」を見せてもらうことです。

外からの見た目は研磨することができるので、古いピアノでもとてもきれいになります。売り物ですから、どんなピアノも当然キレイに磨かれています。
逆にキレイじゃなければ選ぶべきではないです。

今は中古ピアノをリニューアルピアノと言って、外観は本当に新品並みにきれいです。

それも大事ですが、ピアノの中をキレイにしてくれているかが大切なのです。メンテしていないものを売りつけようとしていないかを見極めるためには、中を見ることです。

わからなくても中を見せてほしいというだけで、この人には嘘は見抜かれるから騙せないと思ってもらうためです。そうすれば営業マンは、本当にいいものを見せてくれることになると思います。

ポイントは、弦・ピアノアクション・フェルト交換をしてくれているか、もし交換していなくてもきれいにオーバーホールしてくれているかを尋ねてみてください。

ピアノのオーバーホールとは、古くなったピアノの部品(ピアノの弦、チューニングピン、ハンマー、ダンパーフェルト)を入れ替えて、ピアノを新品同様に使えるようにすることです。

2.ピアノは適度に弾き込んでいる中古品がおすすめ

ピアノの場合、前オーナーにどれくらい弾きこまれているかというのが問題で、ある程度は弾きこんでいるもがベストですが、練習好きな前オーナーのピアノで相当弾きこまれているものは避けたいです。

なぜかというと、フエルト(ハンマー)の減りにバラツキがあると、音色や強弱にばらつきが出て良い音がしなくなるからです。

ここの見極めが難しいのですが、フェルトのへこみ具合が目安になります。
売りにでているものに関しては調整されていると思いますので、そんなにばらつきはないかと思います。

もちろん新品のピアノを買えば、フェルトは全くの凹みがありません。
じゃぁ、新品を買えばよいかと言うと、新しすぎるのも良くないのです。

新品のピアノはある程度弾き込んで、音を安定させる必要があります。(初めは調律も頻度が多いです)新品のピアノが音も安定して自分好みになるのに2~3年はかかると言われます。

ここまで話すと、新品は2~3年かけて自分で仕上げていかなくてはならないし、中古だとオーバーホールがされてなかったらよくない。

そなると、中古品よりも新古品の方がよさそうに思うかと思いますが、そうでもないのです。

3.ピアノ製造の最盛期は1970~80年頃

ピアノ製造の歴史において、ピアノの材質は1970~80年代が一番よくて、それ以降の製造のものは国内でピアノ用の木材がとれなくなり材質が粗悪になっています。

今の新品ピアノは、木の材質が良くないのです。見た目は全く分からないかもしれませんが、サイドの木の厚みも薄っぺらいんです。

後ろから見るとよくわかりますが、70~80年代のピアノに比べて、木の厚みが全然違います。

X支柱という言い方もするのですが、昔のピアノは木の材質もよく太くてしっかりした木を使用しています。それがXにささえられているものをX支柱といいます。

なぜ、木が大切かというと、その木の中で音が共鳴するのですから木の材質で音は変わってきます。そこまでこだわる必要もないかと思いますが、ピアノの購入に関しては、簡単に買い替えや移動が利かない買い物なので、他の物を買うような買い方とは違うということを知っておかれるといいかと思います。

4.グランドピアノとアップライトピアノのどちらが良い?

あとは、グランドピアノとアップライトピアノの違いです。

これは、ヤマハのサイトを参考にしてください。

https://www.yamaha.com/ja/musical_instrument_guide/piano/selection/

グランドピアノとアップライトピアノ、どちらが良いのですか?という質問には、安易に答えられません。

グランドピアノとアップライトピアノ、どちらが優れているということはなく、どちらでもいいと思います。

わたしが音楽大学に進学してもアップライトピアノのままで、引っ越しのたびに連れ回してきたように、経済的なことと部屋の広さ(置き場所)、ピアノに対する想い入れだけなのじゃないのかと思います。

全くの初心者でも、大きな家に住んでいて、グランドピアノを置くのが夢だったとか、弾けなくても家具のように置いておくだけでも良いとか、逆にピアノ経験が長いプロであっても置き場所や経済的な問題でアップライトを選ぶ場合もあるでしょうし、一概にどちらが良いとは言えません。

どちらが自分にとって必要か、合っているか、その方の環境・状況で選択するしかないと思います。

5.アコースティックピアノと電子ピアノ(ハイブリットピアノ)の違い

アコースティックピアノと電子ピアノ(ハイブリットピアノ)は、見た目は白黒の鍵盤で同じに見えますが全く別物の楽器と思って下さい。

「どちらが良いのですか?」という質問の答えでいえば、全く違うものなので、まず楽器の違いを知った上でどちらが欲しいかという風に考えるのが正しい姿かと思います。

一番の違いは音を出すしくみです。
ピアノは指先で鍵盤を押し、その力でハンマーを動かし、弦を叩いて音を出します。打弦による振動が響板を伝わって、豊かな広がりを生むとともに、叩いた弦以外の弦の共鳴も加わって、独特の響きを生み出します。

一方、電子ピアノには弦がありません。鍵盤はいわば音を出すためのスイッチで、打鍵を感知し、電子音源を発音させ、スピーカーを使って増幅しています。

最近、電子ピアノにはハンマーを備えたハイブリットピアノという呼び名のピアノも出てきました。これはアコースティックピアノのように弦をたたくためではなく、「打鍵の感覚と反応を得る」ための装置で、よりアコースティックピアノに近いタッチでの演奏が可能となります。
弦はありません。

これも否定もしませんが、私個人の見解ではあまりお勧めできません。
楽器メーカーさんが楽器を売るために開発した楽器の一つで、現代の家庭環境に合わせて電子ピアノとアコースティックピアノのいいところを取ったような謳い文句を見ますが、電子ピアノとアコースティックピアノの間の中途半端なもののように思います。

もちろんそれを納得したうえで購入されるのなら問題はありませんが、楽器の違いを理解せずアコースティックピアノのようなものだと思って購入されることは避けたいです。

6.消音ユニットという手がある

今は都会のマンション暮らしで、「アコースティックピアノでは音を出すことができない」と、そこが基準で考えていきますので電子ピアノありきから考える方が多いかと思いますが、2章で説明したように、アコースティックピアノには消音ユニットをつけることができます。

でも、賃貸住宅で重量制限がありピアノNGもところもたくさんあります。私自身も賃貸にいたころは、ピアノNGのところが多く苦労しました。その場合は電子ピアノが良いのだと思います。

重量制限の問題がなくピアノが持ち込めるのであれば、自身のピアノが上手くなっていくに連れて生のピアノ(アコースティックピアノ)を持ちたいと思うのは自然なことですし、その時はぜひ消音ユニットをつけたピアノも検討してみてください。

なので、どちらがいいのですか?という質問には簡単に答えられません。
楽器の違いを知ってください。
その上で目的に応じてアコースティックピアノか電子ピアノかを決めればいいと思います。

ピアノを一言で語るのはとても難しいです。せっかくピアノという楽器を学んでいるレッスンをされている方なら、ピアノのことを知っておかれるとより楽しく学んでもらえるかと思います。

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